スペシャル対談 | 第2回 石川森生氏×E-GrantCOO北川対談「石川氏から見るD2Cとは」
本連載では、SaaSプロダクトである「うちでのこづち」を通じて700社を超えるECCRMの支援を行う株式会社E-Grant代表取締役COO北川健太郎と、
DINOS CORPORATION・D2C家具のKanademonoなど、さまざまなD2C企業で顧客と向き合ってきた石川森生氏との対談を通じて、今改めて考える「CRM」と「D2C・ECの未来」についてお伝えさせていただきます。
連載第二回は、“石川森生氏×E-Grant代表取締役COO北川対談「石川氏から見るD2Cとは」”についてお話をお伺いいたしました。
—TOPICS————————————————————————————————————-
―D2Cの要件は流通対策としてのソリューション・CPAを安くするソリューション
―D2Cからマツキヨの一番いい棚が狙える
―世界観をきちんと作るとCPAがめちゃめちゃ下がる
―D2Cでスケールするには「ニッチで世界観の作られたCRMを回すこと」
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1.D2Cの要件は流通対策としてのソリューション・CPAを安くするソリューション
北川:今、“D2C”という言葉に光が当たっていると思うのですが、一般的な定義とは別にして、“D2C”をどのように捉えていらっしゃいますか?
石川氏:D2Cとはなんぞやって結構あいまいになっているじゃないですか、ぼくもそれ分からなかったんです。ディノスという大きな箱以外に個人でも回しているんですけど、1年間やってきてすごくよくわかってきました。D2Cの要件は2つあってひとつは、流通対策としてのソリューション、もうひとつは、CPAを安くするソリューションだと思っています。
2.D2Cからマツキヨの一番いい棚が狙える
石川氏:ひとつ目の流通対策としてのソリューションなんですが、流通って今も昔も当然リアルが大きいじゃないですか。EC化率8%という世界で9割くらいがリアルなんですけど。
本来、手っ取り早くビジネスを大きくしようと思ったら、マーケットサイズが10倍なわけですから、当然、既存のリアルに突っ込んだほうが早いじゃないですか。
ただ、既存流通ってポッとでのベンチャーのプロダクトは、簡単に乗せられないですよね。
たとえばコスメにしても、マツキヨの一番いい棚抑えようとしても、抑えられるかっていったら不可能に近い。あれって、テレビ・CMの出稿が何GRP撒いたら棚抑えさせてくれって構造なんで、先にマーケティングコストがあって、とんでもない莫大なコストを突っ込んだあと、既存流通の一番いい棚を抑えられるという構造がずーと続いているんですね。なのでベンチャー企業が棚を抑えることは、簡単ではないんですね。
この構造って大手からしたらすごく楽じゃないですか、絶対に破られないから。
そんな構造があるなか、実は欧米からそのルールを打破した企業が出てきたんですよ。それがなにかっていうと、SNSでドーンと跳ねたブランドが、TVCMなんて一回も出稿していないのに、一番いい棚を占めてしまうという事象がちらほら起き始めてきたんですよ。
結果何が起きたかというと、大手メーカーがまだ売上十億にも満たないブランドを700億円で買収しましたという、わけわからない事が起こって(笑)、どういうDCFしたらそんなことになるのっていう(笑)
それは、ブランド価値としての買収ではなくて、自分たちが作ってきたシールドを突破した新手法をさっさと飲み込め、という理解じゃないとあの買収金額ってでないと思うんですよね。
そのような中で、一部のプレイヤーがそこに気が付いて、これって今までの既存流通の入り方が変わり、D2Cからも一番いい棚を抑えられるかもしれないというのが1個の文脈なんですよ。
なので流通対策としてのソリューションという話しがひとつ目です。
3.世界観をきちんと作るとCPAがめちゃめちゃ下がる
北川:なるほど、面白いですねー。2つめのCPAを安くするソリューションという点でいうといままでのECとの違いも踏まえてどう異なるのでしょうか?
石川氏:そうですね。当然、一人獲得単価がテレビCMと同じコストだとすると意味ないじゃないですか。だったら、しっかりCMに投下すればいいという話しになる。なので、比較的安価に取る必要があるんですよね。
その方法論は、D2Cとよくセットで言われている“世界観”で、あれってやみくもに”世界観”と言っているわけではなくて、CPAを下げる手段として言っているんですよ。
世界観をきちんと作るとCPAがめちゃめちゃ下がるんですよ。バーティカルでリッチな存在を作って世界観を演出すると、それにハマった人が自分から探して入ってくれる。一般ワードでばーっとバラまかなくても顧客が取れるんですよね。
なんで、その状態まで行くとテレビとコストと比較した時に、“かなり”安いコストで取れるようになる。
ところが、世界観を絞りすぎると、今度ボリュームが出ないから。やはりある程度世界観を作った後にコスト投下できる状態にもっていかないと、スケールが一切しないんですよ。そのため、1億とかに壁があるんですよ。
その1億の壁を超えるときにCRMがいるんですよ。ここで世界観を作ったうえで、顧客とコミュニケーションを取って、LTVを伸ばせるともうすこしボリュームが出るんですよ。それが多分20~30億。
なので、D2Cの多くが20~30億で止まっているじゃないですか。あれは構造的に必然であれより上に行こうとすると、もう既存流通に突っ込むしかないんですよ。なので、結局D2Cの出てきた背景とその手法論で行ったときに、必ず最後にCRMを回さない限り、ある程度のD2Cの規模にならないと思います。
4.D2Cでスケールするには「ニッチで世界観の作られたCRMを回すこと」
北川:そうですよね。一部のプレイヤーは構造として、事業をスケールさせるためには、CRM必然であると捉えていますが。まだまだ、CRMを啓蒙し続けていかなければならない状況であると感じています。どのようにすれば「CRM」というものがもっと根付くと思いますか?
石川:いまこれだけ世の中にD2Cがあふれていると思うのですが、その中の大半の人が今の議論には気づいてはいなんですが。しかし、一部気が付いて意味が分かったうえで、D2Cブランドを作っていくというプレイヤーが増えています。
そういうプレイヤーと会話していると、リテンションの話ししかしないです。ココだけ握ったらパワー掛けていって、リテンションが出来たら、リアルだと棚を抑えに行くというのを、明確に理解している人が居るので、この流れはCRM的にはめちゃくちゃプラスでなので、D2CとCRMの文脈は結びついている人はきちんと結びついている。
いま、D2Cという言葉だけが先行しているが、しっかりとここを解説してあげて、D2Cでスケールする要件の中に「ニッチで世界観の作られたCRMを回すことである」という形でくっつけて伝えてあげるのが早いと思いますね。
最後までお読みいただきありがとうございました。