流通業界で使われる用語「掛け率」とは?意味や計算方法・関連用語を詳しく解説
流通業界に携わっていれば、「掛け率」という言葉をよく耳にします。ビジネスや営業職・ECサイト経営などを営むうえで、原価や卸値・販売価格などの「掛け率」計算は日々行われています。
これらの、原価や卸値・販売価格に至るまでの計算方法や、関連用語を理解するのはビジネスを成功させるためにも重要なことではないでしょうか。 本記事では、「掛け率」の意味や卸値などの計算方法、関連用語を詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてください。
INDEX
流通用語「掛け率」とは?
流通用語の「掛け率」や、卸値・販売価格などの用語や計算は、普段生活するうえで、おおよその原価を予測できるなどのメリットもあります。
流通業界に携わっていない方でも日常生活の参考になりますので、ぜひ最後までご熟読ください。
「掛け率」とは販売価格に対して卸値との比率のこと
まずは、「掛け率」を理解する前にそれに携わる用語の理解を深めましょう。
- 卸値
- 仕入れ値
では、順に紹介します。 卸値とは、メーカーから卸売業者・卸売業者から小売業者など、商品を販売する側から見た価格のことを指します。
仕入れ値とは、卸売業者がメーカーから仕入れる・小売業者が卸売業者から仕入れるなど、仕入れを行う側からみた価格のことを仕入れ値といいます。
用語が違っても意味は同じなのですが、自分がどの立場にあるのかで、呼び名は変わるのです。
それも踏まえて次に、「掛け率」とは、どのような意味になるのでしょうか。 「掛け率」とは、販売時の価格に対して原価の割合を表す言葉で%(パーセント)で表されます。
販売価格に対して、メーカーや卸売業者との間で、仕入れ値・卸値がどれくらいの比率なのかを表すのが「掛け率」計算です。
例えば、販売時10000円の商品に対して、仕入れ値・卸値が7000円だとしたら掛け率計算は70%となります。 ちなみにこれを、実際の現場では「7掛」と表示される場合もあり、意味は7割または70%といった意味で取り扱われるのが特徴です。
「掛け率」に似た「仕入れ原価率」の意味
上記にも述べておりますが、自分がどの立場にあるのかで、呼び方が変わるのです。
「掛け率」に似た用語で、「仕入れ原価率」といった用語があるのですが、結論から申し上げると、同じ意味になります。
メーカー〜卸売業者・卸売業者〜小売業者など、商品を販売する側から見た立場ですと「掛け率」を用語で利用する。 卸売業者がメーカーから仕入れる・小売業者が卸売業者から仕入れるなど、仕入れを行う側の立場ですと「仕入れ原価率」を用語で使用するといった内容になります。
【自分がどの立場にあるのか】で、呼び名が変わっていきますので、間違えの無いように注意しましょう。
掛け率と利益率の違い
掛け率と利益率は、双方とも商品を売買する際の利益を図るために重要な情報です。 しかし、その計算が必要になるタイミングが異なります。
掛け率は、小売価格に対する卸値の割合で、仕入れや価格交渉の際に計算されます。 一方で、利益率は商品・サービスを売った金額の合計である売上に対する利益の割合で、商品売上確定後に、結果的にいくらの利益が上がったのかを算出するために使われます。
掛け率は、数字が小さいほど利益が増え、%または掛けで表示されます。 一方の利益率は大きくなるほど利益が増えて、表示方法は%のみです。
掛け率と上代下代の関係
取引先と商談を行う際、掛け率と一緒に併用されることが多いのが上代・下代です。 小売店や問屋、メーカーなどが商品の価格交渉をはじめとする商談をする際は、専門用語で小売価格を「上代」、仕入れの卸価格は「下代」と呼ばれることが多いです。
例えば、小売価格が100,000円、卸価格60,000円のパソコンを例にすると、「この上代100,000円のパソコンは掛け率が60%なので下代は60,000円となります。」などのように利用します。
さまざまな表現方法が存在しますが、意味は同じ用語もあるので、その会社の業界や取引先に応じて使い分けるべきと考えられています。
卸値や販売価格と関係する「掛け率」の計算方法
どの立場にあっても実際の流通ビジネスでは、卸値などの計算を常に行いながら、商談が行われています。 「掛け率」計算はビジネスの基本となる大事な部分になるので、しっかりと理解をしていきましょう。
卸値の計算方法
卸値の計算方法は、以下の通りです。
■「卸値」=「販売価格」×「掛け率」
※例えば、販売時10000円の商品を「掛け率」70%の卸値でおろす場合の価格は、
【10000(販売価格)×0.7(掛け率)=7000】 で、卸値は7000円といった内容になります。
「掛け率」計算する際に、0.7などの小数点を用いて計算を行わないと、正しい卸値の数字が出ませんので、間違えの無いように注意が必要です。
掛け率の計算方法
掛け率の計算方法は、以下の通りです。
■「掛け率」=「卸値」÷「販売価格」×100
※例えば、販売時10000円の商品が卸値7000円の場合の掛け率は、
【7000(卸値)÷10000(販売価格)×100=70】 で、掛け率は70%といった内容になります。
販売価格に100をかけ(×)た数字を、卸値で割らないと(÷)正しい掛け率の数字が出ませんので、間違えの無いように注意が必要です。
掛け率計算はExcel・ソフトやサイト活用がオススメ
掛け率や卸値などの計算は、今では電卓や頭で計算するのではなくて、Excelの活用がおすすめです。Excelでは上記の計算を自動で行ってくれます。
また近年では、掛け率や卸値などの計算を行ってくれるソフトやサイトも存在しますので、そのような媒体を活用しましょう。
Excelやソフト・サイトを活用する方が、計算間違えも起きずに正確で、時間短縮も図れます。
掛け率や卸値の計算は一度ではなく、何度も行う事ですので積極的な導入を検討してみて下さい。
利益率の計算方法
利益率とは、販売価格に対する利益の比率です。 利益率の計算は簡単です。 利益率=売上から仕入れ価格を引いた「利益価格」÷売り上げ(販売価格)
例として、家電量販店で100,000円で販売しているパソコンを家電量販店がメーカーから40,000円で仕入れて販売する場合の利益率を先ほどの式に当てはめてみましょう。
100,000円-40,000円=60,000円
60,000円÷100,000円=0.6
ということで利益率は60%となります。
この数字を家電量販店から見ると「メーカーから利益率60%でパソコンを仕入れた」となります。 一方パソコンメーカーは、「家電量販店に対して60%の利益率でパソコンを卸した」となります。
業種や商品別に「掛け率」の相場を紹介
業種や商品によって相場は違ってきますが、実際にどのくらいの相場で流通されているのでしょうか。
本記事では、あくまでおおよその参考ですが、業種別に相場を紹介していきますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
業界別に「掛け率」を紹介
業界別による相場は、以下の通りです。
- アパレル業界 50%〜60%
- 食品業界・おもちゃメーカー 70%
- 飲食業界 40%
飲料品は、卸値などの原価が安いといった特徴があります。 しかし、双方との関係性や季節・流行などのトレンド、時代におけるお客様のニーズによって、掛け率計算は大きくもなったり、小さくもなったりします。
しかも、この卸値・仕入れ値・掛け率などは流通業界において、収益にも大きく関係している計算内容なので、一般消費者に公開されるようなことは一切無いといった特徴があるのです。
「訳アリ商品」はコストを抑えれる可能性も有り
実際には、おおよその相場は存在するものの、季節ハズレな商品・トレンドのずれなどによって、通常の相場より低い卸値で計算されて卸す場合もあります。
上記のような商品は、通常相場に比べて低い相場になるために、価格設定の計算が何度も行われる傾向にありますので、こまめに相場価格の確認が必要になります。
値下げ商品や人気商品は掛け率が低い
値下げ商品や人気商品などでは、セールや目玉商品としての販売を前提として、掛け率の設定が低い場合があります。 このようなケースでは、掛け率をあえて低く設定し、卸業者やメーカーが優先的に販売を推し進めたい狙いがある為です。
ほかにも例えば洋服では、売れ残ったサイズや色に偏りがある商品なども、掛け率が低く設定されます。 一般的に、値下げ商品や人気商品は、予め決められた掛け率とは別に適宜設定されます。
仕入れたい商品の相場が不明なときは、メーカーや卸業者に直接確認するか、企業のサイトに掲載されていないか確認しましょう。
「掛け率」をさらに変えるには直接交渉やタイミングが大切
次は、時と場合を考えて直接交渉や、タイミングを工夫するといった経費対策も存在します。
例えば野菜などでは、収穫時期や収穫量・季節によって需要は変化しますし、衣類のコートは冬に需要がありますが夏場は需要がないので、比較的安価な卸値が計算で打ち出せるかもしれません。
時と場合を考えたり、ビジネスマンとして、対人と親密な関係を築いて、価格交渉できる等の営業力を求めることも、卸値などを抑える為には大切なことではないでしょうか。
「掛け率」に関わる用語と意味や計算方法
流通業界において、スムーズで低コストなビジネスを進めていく上で、卸値などの計算も大切ですが、専門用語や意味をしっかりと理解しておくことも大切になります。
本記事では、いくつかの用語と意味を紹介致します。
原価率(原価)とは?
原価率(原価)とは、流通ビジネスにおいて、一番メジャーな表現で用いられる代表的な言葉です。 上記で説明した、立場によって呼び名が変わる「卸値」や「仕入れ値」とは違い、どの立場にあっても関係なく、一つの商品に対する卸値・仕入れ値のことをいいます。
卸値・仕入れ値=原価率(原価)のことで計算され、流通用語で最も意識しなければならない用語となりますので、しっかりと理解しておきましょう。
利益率(利益)とは?
利益率(利益)とは単純に考えて、プラスとなって儲かった金額のことを指して、%で表示されます。
卸値や仕入れ値・掛け率などの計算は、全てこの利益を導き出すための計算方法になりますので、最も大切な用語になりますからしっかりとおさえておきましょう。
値入率とは?(値入れ)
流通用語で、値入(ねいれ)といった用語も存在しますが、こちらは中々耳にすることは少ないのではないでしょうか。
値入れとは、販売価格と原価の差額のことを指しています。こちらも流通ビジネスにおいてよく利用する言葉ですので、しっかりと理解しておきましょう。
値入率の計算方法は、利益率の計算方法と同様に【値入率=販売価格-原価】となりますが、値入り率は販売前の売り上げ予想であるのに対し、利益率は実際に販売が完了した後の数字になってきます。
使い方を、間違えないように注意が必要です。
掛け率と利益率はどう違うのか?
結論から申し上げると、掛け率と利益率も使用・計算するタイミングが違ってくるので、注意が必要です。
掛け率は、販売前の仕入れ値や卸値・販売価格を交渉する際に使用します。
一方で、利益率は実際に販売された後に、どれくらいの利益が上がったのかを確認する際などに用いられるのです。
販売前の見込み予想時の計算と、販売後の結果を表す計算で呼び名が変わってくるので、間違えの無いように注意しましょう。
値入額と利益額・利益率の違い
実際、試しに計算してみると、「利益額と利益率」は、「値入額と値入率」の値とまったく同じになります。
しかし、値入額と値入率に関しては販売前の推測で、利益額と利益率は販売結果が出てからの数値であるという点が異なる点です。 想定で決めた売価ですべての商品を売り切れば、双方の数値は一致しますが、実際の商売の中では、すべての商品が想定した価格で完売することはまずありません。
例えば、破損や汚損または万引き被害にあうことでロスが出たり、特売などの目玉品や売れ残り品を割引販売をしたりします。 その結果、通常は実際の売上価格は想定した売価より低くなります。
このようなことから、利益率は通常、値入率よりも低くなる傾向があります。 目標の利益率を達成するためには、ロスを考慮した上で値入率を決めなければなりません。
掛け率の使い方
「掛け率」という用語は、小売や卸売などの流通業で、商品を仕入れて販売する際に使用されます。が、実際のビジネスを進める上でどのように使うのでしょう。 ここからは、掛け率を使う場面、使い方を紹介します。
掛け率は価格決定や、価格を交渉する際に使う
掛け率は、商品の原価から利益額を出したり、その利益額を根拠とする販売価格を決定する際に使用されます。
掛け率は、販売価格に対する卸値の比率で、仕入れや価格折衝の際に使用されます。 それぞれの業界で掛け率の相場が決定している場合、販売価格はその掛け率に従って設定されることがあります。
また、商品を仕入れる際に「これはもっと低い掛け率にしてください」などと値段交渉の際にも使われます。 商品を仕入れる際の商談の際には欠かせない言葉と概念です。
掛け率を使用した文例
「掛け率」という言葉は以下の文例のように使用します。
「アパレル業界の商品の掛け率はだいたい5掛けです。」
「今年の冬は短そうだから、そろそろ冬物の掛け率は下げた方がいいでしょう」
「あのメーカーが3掛け、2掛けで商品を卸したので、業界の相場が崩れてしまった。」 「年間で1000万円以上お買い上げのお取引先様には、掛け率をワンポイント下げてご提供します。」
「この商品は掛け率が低いので、大きな利幅があります」
本記事のまとめ
本記事では、流通業界で使われる用語「掛け率」の意味や計算方法・関連用語を詳しく解説しました。
「掛け率」とは、販売時の価格に対して原価の割合を表す言葉で%(パーセント)で表されます。
計算方法は、以下の通りです。
「掛け率」=「卸値」÷「販売価格」×100 例えば、販売時10000円の商品が卸値7000円の場合は、70%になります。
関連用語として、原価率・利益率・値入率などがありました。
■原価率とは、どの立場にあっても関係なく、一つの商品に対する卸値・仕入れ値のことです。
■利益率とは、単純に考えてプラスとなって儲かった金額のことを指して、%で表示されます。
■値入率とは、実際に販売時と原価の差額のことを指していますが、値入り率は販売前の売り上げ予想で計算します。
一方で、利益率は実際に販売が完了した後の数字となり、販売前と販売後では、呼び名や計算のタイミングが違ってきます。
是非とも上記の記事を、流通ビジネスを行う上で参考にされてみてはいかがでしょうか。
最新のEC・CRM事例やノウハウ、事業者対談セミナー・記事などマーケティングに役立つ情報をお届けします。