越境ECとは?メリットや始める前の注意点、導入までの4ステップを解説
国境を越えてECサイトを運営する越境ECをご存じですか?
インターネットによる商取引利用者数は年々増加しています。日本でもEC利用者の増加に伴い越境ECが注目を集めています。
海外から日本製品を見ると「品質」「安全性」「信頼性」という点で優位性があり、ニーズが高い商品やサービスも数多く存在します。
また、中国をはじめ海外市場規模は増加しており、商圏の拡大という意味でも非常に魅力的です。
この記事では、越境ECの出店方法、市場規模、メリット、出店前の注意点などについて詳しく解説します。
INDEX
越境ECとは?
越境ECとは、日本国内に留まらず国境を越えて行われる商取引のことです。
日本のECサイトが海外に進出する場合と、海外のECサイトで商品を購入するものがあります。一般的に、日本企業が販売する商品は海外でも需要があることが多く、昨今の円安の影響でニーズは今後も増えていくと予想されます。
越境ECは一般的に2つの方法があり、一つは新たに海外にECサイトを立ち上げる方法。そして海外モールに出店する方法です。市場規模は急拡大しており、成功すればビジネスが大きく拡大できるため、越境EC市場は今後、益々活性化していくでしょう。
越境ECによる海外展開が普及している背景
コロナ化により、外国人の観光客が減少傾向にあり、日本製品が外国人に触れる機会も少なくなっている一方で、スマホなどのネット需要は増加傾向にあります。
越境ECを取り入れることで、自社製品の海外展開を実施して、収益向上が出来るだけではなく、税金対策にもなるのです。
売上げ拡大が期待できる
日本の製品は海外で評価が高く、信用されていますので、万が一日本で売れていない商品でも、海外で売れる場合があります。
近年では、日本人に比べて外国人の方が資産を多く保有している傾向にあるので、買い物に関しても、多くの日本製品を購入してくれる可能性を秘めているのです。
コロナ前に現象化していた、中国人観光客による【爆買い現象】が、まさしくその一例で、多くの資産を保有している人は買い物も豪快で、商品を大量に購入してくれる可能性を持っているのです。
世界的にスマホ重要が向上している
近年ではスマホなどのネット需要が増加傾向にありますので、それらを活用したEC戦略が、極めて重要になります。世界中の人々が店先の商品だけでなく、ECサイトをスマホで見て、商品を選んでいるのです。
まずは日本の商品を、国境を越えて世界中の人々に見てもらう機会を構築しないと何も始まりません。
手間と時間が掛かっても行動力を持って、越境ECを実践することにより、日本の数倍の顧客が自分の商品を目にすることとなり、壮大なる可能性を秘めているのではないでしょうか。
外国人の訪日減少化による、ネットでの買い物需要が増加
越境ECを実践するタイミングとしては、今が最も適していると言えます。
近年ではコロナの影響により、外国人観光客は減少傾向にありますので、日本の製品を触れる機会がありません。
日本の製品に外国人が、触れる機会が無いのであれば、日本人相手に商品戦略を打ち出していく必要がありますが、それにも限界があるのです。
EC事業は増加傾向にある為、ほとんどの顧客がネットを活用している今こそ、取り入れるタイミングなのではないでしょうか。
実店舗商品を世界に向けて宣伝できる
EC事業は、様々な場所に実店舗を持っていなくても、自社の商品を周知できるツールになりますが、それは日本を越えて、世界に向けても発信できるのが越境ECなのです。
日本だけではなく、外国に日本の製品を見てもらう機会を構築すること、そのためには世界を見据えた、ネットを活用した越境EC戦略が極めて重要になります。
日本のビジネスシーンで、収益化が難しくなってきた今だからこそ、世界に向けた戦略を取り入れることで、大幅な収益増の可能性を秘めているのではないでしょうか。
消費税が免税の対象になっている
越境ECは国内販売するわけではなく、海外で商品を販売する形になりますので、消費税が掛かることがなく、輸出扱いになるので税金は輸出免税扱いになります。
日本の消費税がかからず、日本だけではなく海外を対象としてビジネス展開できることが、越境ECのメリットと強みになります。
消費税がない代わりに、関税が発生しますのでこれらを理解することも、越境ECを導入する際には重要な項目になります。
越境ECの4つのパターン
越境ECには、主に自社で新たに越境ECサイトを構築する方法と海外のECモールに出店する方法があります。しかし、それ以外にも越境ECを行う方法が選べるようになりました。ここでは、越境ECを始めるための4つのパターンを紹介します。
1.自社で越境ECサイトを運営
越境ECを行うために、もっとも自由度が高く現地のニーズに合わせた運営ができるのが、自社で越境ECサイトを構築する方法です。
出店する国を選び、その言語や決済システムに併せてサイトを構築します。海外のニーズに併せて細かい設定ができるため自由度は高いですが、構築までのコストがかかったり、期間がかかったりする点が難点です。
2.海外のECモールに出店
越境ECを短期間で開設するには、現地のECモールに出店するのが最適です。この場合、越境EC販売が認められているECモールを選ぶ必要があります。
欧米ではAmazonやeBay、中国では天猫国際(Tmall Global)や京東全球購(JD Worldwide)が越境ECが可能なモールになります。
3.保税区を利用した越境EC
中国エリアでの越境ECは、保税区を活用することが可能です。
保税区というのは、輸出入の許可が下りるまで商品を保管するための特別地域の事で、中国内にある倉庫に商品を保管し、商品をそこから発送することで中国を対象とした越境ECの運営をすることができます。
商品が現地にあるため、配送時間や配送料が抑えられるメリットが期待できます。
4.代行販売型の越境EC
コストを抑えて越境ECを運営するには、代行販売型越境ECを利用する方法があります。
代行販売型越境ECとは、一切の海外での越境ECを代行業者に任せてしまう方法で、代行業者の方で商品を買い取り、商品はこの業者を通じて海外の顧客に配送されます。
この方法では、越境ECサイト構築費用や海外モールへの出店の手間もありません。しかし、代行業者が価格を決めるため、手数料や配送料を載せた売価設定になり、本来の商品の価格よりも上がります。また、顧客情報も代行業者の管理となるため直接販売に比べてメリットが少ない方法です。
越境ECの市場規模
昨今ではインターネットを通じて、国内から海外の商品を購入することが珍しくない時代になりました。ここでは年々増加の一途をたどる越境ECの市場規模について説明します。
日本・米国・中国での超越EC取引の市場規模
経済産業省の「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する調査)」によると、日本・米国・中国の3カ国間における超越ECの市場規模は毎年増加しており、令和2年度の増加率は以下の様になっています。
- 日本市場での米国・中国事業者からの越境EC購入額の増加率 7.6%
- 米国市場での日本・中国事業者からの越境EC購入額の増加率 9.9%
- 中国市場での日本・米国事業者からの越境EC購入額の増加率 16.3%
と、いずれの市場でも越境ECの市場規模は拡大しています。
引用元:令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する調査)
日本・米国・中国以外の市場規模と今後の予測
また、日本・米国・中国以外での越境EC市場規模を見ても年々拡大傾向にあります。
国別に見ると英国・韓国・ドイツ・フランス・カナダ・インド・ロシアなどが増加しており、日本・米国・中国以外でも市場規模が上昇している国は数多くあります。
越境ECのメリット・デメリット
年々拡大傾向にある越境EC市場ですが、実際に越境ECを始めるにあたってどのようなメリットがあるのかを把握しておくことは重要です。ここでは、越境ECのメリット・デメリットについて解説します。
越境ECのメリット
まず、越境ECの主なメリット2つについて見ていきましょう。
商圏が拡大できる
国内市場では、少子高齢化による人口減少から日本国内での市場規模の減少は否めません。一方、中国は人口約14億人を超える巨大市場となっています。さらに、欧米市場に目を転じてもその購買力は目を見張るものがあり、世界の市場は大変魅力的に映ります。
国連が発表した数値によると、2019年以降世界の人口は増え続け、2019年時点で77億人の世界人口は、2100年には110億人に達すると予測されています。今後30年でなんと約25%の人口増加となります。つまり、30年後には、これだけ多くの人がEC市場へ流れてくる可能性があります。
越境ECでは、言語や通貨にとらわれず、多額の設備投資の必要もなくこの世界市場に打って出ることができるため、簡単にこの巨大な市場への新規参入が可能になります。
この様に、越境ECには大きなビジネスチャンスが潜んでいると言ってよいでしょう。
価格より付加価値で戦える
国内ECの問題点は、多くの類似商品との差別化が厳しくなっていることです。最終的にはコスト競争になり利益を下げざるを得ない状況になっています。
一方、越境ECでは、日本企業の優位性や、商品のブランディングや品質、安全性などを打ち出すことにより、価格競争に陥らず、ブランドや付加価値を上げる戦略を取ることが可能になります。これは、ECで安定的に利益を確保するために非常に重要な要素となります。
越境ECのデメリット
では、逆に越境ECのデメリットについて気になる2点を紹介します。
言語や決済方法の壁
越境ECのデメリットは、言語や決済方法の違いです。国によって言語は違うためECを展開するには全てその国の言語に置き換える必要があります。
また、決済方法についてもその国に合わせる必要があります。日本であれば、クレジット決済や銀行振込、コンビニ決済など多様な決済方法が選べますが海外では、クレジット決済ができない国も存在します。事前に展開する国の決済方法について詳しく調査しなければなりません。
それから、言語や決済方法のほかに「規制」の壁も存在します。主に食品、化粧品、家電製品などに多く、日本国内であれば普通に流通しているような商品でも、海外では各国の法律により規制されている場合があるので要注意です。
関税や物流の壁
国境を越えて商取引をする場合、関税という壁が発生します。関税とは「輸入品に課せられる税」のことです。関税制度は国により異なり、非常に複雑なため、あらかじめ取扱う商品の関税を調べておく必要があります。商品によっては、関税の規制上取引ができないものもあるので要注意です。
また、もう一つ関税と切り離せない物流の壁も存在します。日本国内のように物流インフラが整った国はそう多くはありません。商品を輸出するためには、以下の3項目が必要になります。
- INVOICEの作成
- 船便・航空便手配
- 対象国の関税の算出及び徴収方法
この様に、越境ECでは関税や物流について事前にやるべき項目が多いことが最大のデメリットと言えます。
越境ECを始める前に知るべき注意点
越境ECは魅力的なビジネスですが、事前に入念な準備をしておく必要があります。
越境ECを始める前に知るべき注意点について解説します。
展開する商品やサービスが越境EC向きかどうか?
最初に気をつけたいのが、展開する商品やサービスが越境ECに向いているかどうかという点です。3つの観点から詳しく見ていきましょう。
日本からの輸出規制はかからないか?
最初に確認すべきなのが、輸出入の際、対象となる国の関税法で規制がかかるかどうか?についてです。
中国を例にとると、古着については規制があり輸入が禁止になっています。また、中古機器についても現地確認が必要になるなど中古商品の販売には適していません。
この様に国ごとに関税法による規制は多様なため、あらかじめ各国の税関ホームページで展開する商品やサービスが輸出入が可能かどうかを確認しておきましょう。
国際間輸送が可能か?
次に注意したいのが国際間輸送が可能かどうかです。一般的に越境ECでは国際郵便の「EMS」が利用されます。
ところが、商品によってはこのEMSで送ることができない商品もあります。ジュエリーや宝石などの貴重品、食品、リチウム電池などはEMSで輸送することができません。
また、EMSで送れるサイズは長さ1.5m以内、外周3m以内、重量30kgと決められており、大型商品を送る場合はEMS以外の輸送サービスを利用しなければなりません。
この様に、輸入規制をクリアしても国際間輸送の問題に注意する必要があります。
関税が高い場合もある
最後に関税についても確認しておきましょう。海外で商品を購入する場合に消費者が支払う金額は以下の様になります。
「商品代金 + 消費税 + 輸送量 + 関税額」
つまり、関税額は最終的に消費者が支払わなければなりません。関税額が高ければ、商品代金が安くても支払代金は高くついてしまうため、最初に自社の商品が価格的に競争力があるかどうかを見極める必要があります。
一般的に関税が高いものは「革製品」「洋服やバック」「お茶」などで、30%〜10%ほどの関税が課せられます。越境ECをする場合、展開する国の商品価格と関税・送料を含めた代金とを比較し、競争力があるかを確認しておくべきでしょう。
あらかじめ商品・サービスのニーズを見極める
また、国による文化や風習の違いにより日本ではニーズが高い商品でも、海外ではまったくニーズがないというケースも少なくありません。特に宗教的な意識の違いによるものが多いため、出店を決める前に、あらかじめ自社の商品・サービスが展開する国でニーズがあるかをしっかりとリサーチしておく必要があります。
出店後の販売計画を立てる
ここまで、準備を整えてきたら次は出店後の販売計画を立てましょう。海外では日本で培ったマーケティングデータや販売計画などをそのまま使うことはできません。あくまでの出店する国に合わせたプランが必要になります。
いくら入念に考えた販売計画でも、越境ECでは思わぬ落とし穴が待ち受けている場合もあります。常にPDCAサイクルを意識しながら販売計画を見直していく意識を持つと良いでしょう。
越境ECを始める4ステップ
現地の商習慣や文化を確認し、綿密な販売計画を立てたら次はいよいよ越境ECをスタートさせましょう。では、具体的にどのようなステップで始めればよいのでしょうか?ここでは、越境ECを始める4つのステップについて解説します。
1.商品の準備
最初に必要になるのが商品やサービスの準備です。在庫はどの位確保するのか?倉庫はどこで借りるのか?配送方法は何を使うのか?などを具体的にイメージしながら、商品・サービスの準備を進めていきます。
越境ECでは物流がカギになります。海外ユーザーになるべくストレスなく商品を配送するための物流体制をどれだけ整えられるかは、ECビジネスを成功させる上で重要なポイントです。
2.ターゲットを設定
越境ECでも、国内EC同様ターゲットを設定しておく必要があります。性別、年収、家族構成、趣味、地域を決め、現地でのニーズを把握した上で具体的なターゲットを決めましょう。
国内とは違い、セールやキャンペーンの時期や消費傾向も異なるため、出店する国の情報は最初に調べておきましょう。
3.法律・規制・商習慣を把握
越境ECを始めるにあたり、現地の法律・規制・商習慣についてあらためて確認しましょう。
特に法律や規制は国によっては頻繁に改定される場合も多く、最新の情報を常に把握しておく必要があります。
取引を開始してからトラブルが生じることが無いように、準備を怠らないことがポイントです。
4.出店方法を決定
越境ECの4つのパターンでも解説しましたが、越境ECを出店するには様々な方法があります。ここでは代表的な出店方法についておさらいしておきましょう。
現地法人の設立
越境ECを本格的に取り組みたい場合、現地法人を設立し、自社で越境ECを構築する方法がおすすめです。出店後のトラブルが少なく、将来的に大規模なビジネスを狙える可能性があります。
しかし、出店までの時間やコストなど準備に手間が掛かることは事前に心得ておきましょう。また、失敗した場合のリスクは、当然大きなものになります。
現地モールに出店
最初は、状況を掴むために現地のモールに出店して様子をみたいというケースもあります。テストマーケティングが目的ならば、短期間で出店ができる現地モールを利用するのが最適な選択です。各国のモールで越境ECが許可されているかを確認し、ショップを開設するだけなので準備期間は少なくて済みます。
自社ECサイト・国内モールで対応
越境ECに本格的に参入するかまだ分からないという段階では、まずは自社ECサイトや国内のモール内で海外からの受注を初めてみるという方法もあります。越境ECの市場規模は大きく魅力的な市場です。その可能性を探るためにも、海外市場に向けての対応を始め、反応を見てみることもおすすめです。
まとめ
ここまで、越境ECの方法や市場規模、メリット、注意点などについて解説してきました。
今後の国内市場は少子高齢化により市場の伸びは期待できません。海外に目を転ずることで商圏の拡大、収益性の維持などのメリットは数多くあります。越境ECは、初期投資を抑えながら海外進出をするのに有利な武器となります。
ただし、国が変われば法律や規制も代わり、さらには文化や生活習慣も変わります。簡単にはいかないかもしれませんが、入念な準備のもと、PDCAを繰り返すことで新たな活路を見いだすことは容易でしょう。
昨今では越境ECを行うにも、いくつかの選択肢が選べる時代になりました。今後の海外戦略を見据え、自社の商品やサービスの強みを認識しながら最適な方法で越境ECをはじめましょう。
最新のEC・CRM事例やノウハウ、事業者対談セミナー・記事などマーケティングに役立つ情報をお届けします。